FUZZY
ひとつ言えることは俺って存在が理乃さんの中で〝まだ〟形になっていなくて。
もしかしたらちゃんと形を作るかもしれないし、自然と壊れていくかもしれないしそれは今後の俺次第なんだと思う。長期戦になりそう。
「俺に触れられて嫌だって思ったことある?」
「それはない!いつも優しく触れてくれるから嫌だなんて思ったこと一度もないよ」
「理乃さんのことが大切だから自然と優しくなるんだろうね」
「碧生くんの言う〝大切〟ってどういう意味を持ってるの?かわいい、もそうだけど。ずっと気になってたの。どうしてそこまで私なんかと関わってくれるんだろうって」
いや、だからそれはね?
俺が理乃さんのことを好きで、好きだからかわいいと思うし大切にしたいってことで。言えない〝好き〟をそこに隠して届けてるつもりなんだけど気づかないよね。
俺は臆病だけど理乃さんは超がつくほどの鈍感さんだ。
と。
ピーンポーン
話を遮るかのようにチャイムが鳴った。
時刻は夜の10時を回ったところ。この時間に訪問者はどう考えてもおかしい。よっぽど親しい人じゃないと——…
「あ、弘実だ」