こい に つかれる




季和のわるい笑顔が歪んで、秒速のセンチメンタルはどうでもよくなった。

季和、季和、これって一種の恋なのかもしれない。だってきみを離したくない。



「最後だよ、制服は」

「いや最初だろ。卒業してはじめてなんだから、さ」

「変態」

「、で結構」



防いでしまったら非生産的、でも、良いよ。誰でも良くないし、好くない、善くない、欲。

ハイハイ据え膳、とわざとらしく寝転べば、軽い笑い声を零した季和が上体を屈めてキスをしてくる。

それだけで顔に出ずに精一杯になっちゃう私の、強がった脆弱な部分に気づいてほしい。教えてあげるから。

疲れちゃったら、温めてほしい。そうしたらすぐに直ってしまうから。

キスをする。

切っ掛けなんて大層なことは思い出せない。友だちじゃない。こいびとじゃない。それでも極彩色で、これは恋。

キスをする。

暗い部屋、ベッドの真ん中、コンビニ袋を広げ手繰った机の上、巻数揃わない本棚、私の、制服のリボンが床で眠る。

どうでもいいよ。
まもりたいの。

不変でいてほしい部分を抱えた、世界を。



「季和、」

「すきだよ」

「はは、うん、おんなじこと思ってた」

「果無」




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