こい に つかれる
頬に触れていた手を離す。代わりに季和の手のひらが私の頬に触れて、乞う。
あ、いま、平常心が乱れた。
「目え瞑ってよ」
ハッとしながら匂わさずに目を閉じる、距離が詰まる時間なんて数えられないほどに短くて。目、閉じなきゃ良かったな、なんて思う。
キスなんて呆れるほどしてるのに、いつも季和の眼が見れない。
黙らせて、とか願ったけど、ねえ、ねえ、ねえ。本当は黙りたくなんてないの。
思ったよりゆっくり離れて行ったつめたい熱に目を開くと、季和は静かな湖畔を映したような瞳で私を見ていて。
それが、忘れかけていた、今日の変化に似ていて思わず首に腕を回して前のめりに季和を抱きしめた。
「もう、もうこんな時間は来ないね」
私たち、ちょっとちょっと、って進み続けてしまうのだから。やになるほど積み上げたもの立ってきっとズレて仕方なくて、いつか後ろを向いてしまうの。
恋だったのかな、とか不一致。これはキラキラを閉じ込めた宝箱を過去にするのが嫌なだけ。
寂しいだけ。寂しくないって強がれないだけ、この世界線で。
「果無、ピアスは明日開けよう」
子供をあやすような手が私の後頭部をゆっくり撫でる。あ、このすこし自分のものにした感じも、2ヶ月くらい経ったら。
風みたいに過ぎていくの、かな、そうだよ。悔しい苦しい苦しゅうない、4度回って望んでいるのかもしれない。
「季和も一緒にね」