こい に つかれる
「え、やだ」
空気を読めない即答がちかくて響いて笑ってしまった。
「軟骨もう一個開けたいって言ってた」
「いたぁいもん、しんどい」
「今更かわい子ちゃんしないでよ」
「や、マジで痛えし」
「痛くない開け方とかあるんじゃないの?」
「調べといてよ、果無ちゃん」
「気が向いたらね、季和くん」
昨日と何ら変わりない安心感と喪失が繰り返される前に、区切りでも別れのない分かれでも告げなきゃいけないのが定石だっておとなのきまりごと。
私も告げなきゃいけないなんてないし、きみが言い出さなきゃいけないなんて強要はナンセンス。言わないでね。
言いたくない、言われたくない。急な接点は要らない。いらない存在じゃない。
ねえ。ねえ、季和。
陳腐な言葉すら言い出せない。
「あー、あー明日から自堕落だね」
「うち来れば? 毎日。そんで俺の周りのこと代わりにやって」
「それ今と変わんないよ、そろそろお金とるからね」
ゆるく抱きしめてた腕にすこし力を込めると、季和の手が私の制服の襟を軽く掴んで、私を後ろに引いた。
抵抗なくすこしの距離をうむ。何するの、って軽い調子で責めて、それから。
それから。
「変わる必要ないだろ」