My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~
「はぁ……もう子供の頃みたいに上手くいかないよね……」
涼のやる気が出る言葉を、熟知しているつもりの渚だったが、もう聞く耳を持ってくれない。
溜め息をついて、項垂れるようにベッドに座った。
涼はこのまま学校を辞めちゃうのかな……
学校辞めたら、もう会うこともなくなっちゃうのかな……
これまでに過ごしてきた約10年の間、楽しい時もあれば、喧嘩をした事だってある。
それでも楽しかった記憶だけがら甦ってくると、涙が溢れてくる。
テレビを見ても、何一つ頭に入ってこない。
好きな動画配信サイトも、面白くない。
気分が晴れていないと、何をしても楽しいと思えないもの。
「仕方ない。怖いけど行くしかないっ!!」
ベッドから勢いよく立ち上がった渚は、涼に会うために外へ出掛けた。
涼の居場所は、なんとなくわかっている。
不良グループが溜まり場にしている、ゲームセンターのガレージへ向かったのだ。
もう空は暗くなり、普段なら家でご飯も食べ終わっている時間。
「早く帰らないとお母さんに怒られちゃうな……」
渚は遅い時間に出歩いて、母親に怒られること以上に、涼の事を心配していた。
映画のオーディションの話を、涼の目の前で一生懸命伝えると、わかってもらえるんじゃないか?
そんな気持ちで、ゲームセンターへ向かう渚だった。