My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~
「あっ……行っちゃった……」


渚が涼の背中を見ながら、寂しそうに呟いたが、紫音は何事もなかったように言った。


「射的しよっか。渚はどれがほしい?」


「えっと、あのウサギのぬいぐるみがいいです」


「わかったよ。渚が銃を持ってくれる?」


「えっ?私、やったことないんですけど……」


「いいから持ってごらん?」


渚はいつも、涼の応援係だった。


渚は初めての射的に戸惑いながら銃を持つと、紫音が背後からそっと体に手を回してきた。


「こうやってウサギに銃を向けて打つんだよ?」


紫音は渚に体を密着させて、手取り足取り、銃の使い方を教えてくれたのだ。


「あ……はい……」


渚の顔のすぐ横で、紫音と一緒にウサギを狙う銃口を見つめている事に、緊張とドキドキが止まらない。


顔に吐息がかかるほどの距離で、紫音が話しているのだから。


近いよ……


紫音……


本当の恋人ってこういうものなの……?


ドキドキして、どうすればいいかわかんないよぉ……


そんな渚の気持ちを知ってか、知らずか?紫音は楽しそうに言った。


「このくらいでいいかな?打つよ~」


渚の手の上から紫音も手を重ね、二人で一緒に放った玉は、ウサギを打ち落とした。


「やったーっ!!紫音のおかげで落とせたよ?」


「上手いね~。渚のセンスが凄いんだよ」


自分で落とした喜び、そして紫音が手取り足取り教えてくれたこと。

涼とは違う紫音の縁日の遊び方に、感動すら覚えていた渚だった。



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