My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~
涼と舞が撮影している間、渚はぼんやりと川辺の柵に寄りかかり、一人で花火を見ていた。


一人で紫音との告白のシーンを、思い出していたのだ。


腕を掴まれた後、ギュッと抱き締められて、耳元で告白された。


「初めて見た時から、好きだった……」


台本通りだとわかっていても、抱き締められて告白されると、寂しかった心に突き刺さる。

渚が紫音を見上げて、言葉を失ったまま、目を見つめると紫音が言った。


「俺と付き合ってくれないか?」


「うん。よろしくお願いします」


ここまで台本通りだった。


それなのに紫音は渚のあごを指先で支えて、軽く上向かせる。


「えっ……」


驚いた渚の顔に、紫音の顔が寄ってきた。

何が起こっているのかわからないが、カメラは二人の元へ近寄ってきて、監督も止める雰囲気はない。


えっ………


えーーーーっ!!


紫音の顔がどんどん寄ってくるにつれて、パニックになった渚は、頭が真っ白になってしまう。


初めてのキス……


どうすればいいのかわかんない……


でも……


ふわふわした気分……


渚は紫音の背中に手を回して、ギュッと力強く抱き締め返すと、そっと目を閉じた。


台本にないのに……


キスなんて……


好きになってもいいんだよね……?


紫音……


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