それでも、恋
4人で、以前と同じコーヒーショップに寄り道した。こっちゃんが、ここの季節限定のチョコレートドリンクがすごく可愛くて写真が映えると教えてくれたからだ。
たしかに、赤いハートが描かれたカップもかわいかったし、ハート型のチョコレートがトッピングされていておしゃれなかんじ。なるほど、そろそろバレンタインデーなのか。一条くんにあげる?えーっ、どきどきしちゃう。
じょうずに撮れた写真を眺めているこっちゃんが、気まぐれな言葉を落とした。
「ことしも一条くんはいっぱいチョコもらうかな」
「え!いつもいっぱい貰ってるの?!」
「いっぱいじゃないから、やめて」
わたしが噛みつく勢いで訊ねるから、すこし引き気味の一条くんが控えめに否定する。そんな光景を笑いながら、折口くんが首を傾げた。
「宇田さん、俺にもチョコくれる?」
「ちょっとまって折口くん」
「ううん、いいよ」
「ちょっとまって宇田さん」
ちょっと待ってほしがる一条くんを無視して、折口くんと話す。ばかのくせに、距離感を掴むのがほんとうにじょうずなひとだ。
いつも不安定な距離感で、わたしたちの青春はなりたっている。ていうか、青春ってそういうものなのかもしれない。
いつか大人になったとき、大人になったねって、みんなといっしょに笑いたい。これから受験生になって、それぞれの進路を見つけて、苦手だった数学を克服して、それでも。
いま、この瞬間のわたしたちを忘れないように、大切にしたいなと思って、スマホのカメラを起動させた。