それでも、恋
そこから、授業中の学生らしくお手紙の回しっこが始まった。こっそり、音を立てないように。
〝タイヘンありがとうございました〟
〝あとでしっかりお礼もらうよ〟
〝おんきせがましい〟
手紙のやり取りの合間にノートをとる。高梨先生は、またエックスとワイとゼットの話をしていた。え、ゼット?新入りじゃん?もうこれ以上仲間を増やすのやめてよ。
〝うださん、タカナシ先生にほめられてにやにやしてた〟
〝タカナシ先生ちょうかっこいい〟
何気なく返事を書くと、彼はまたちょっと不機嫌になった。一条くんの答えを盗んだわたしが、それを自分の手柄にして褒められて。しっかり頬を緩ませたのが気に食わなかったのだろうか。
そう考えると圧倒的にわたしがわるいので、新しく買ったお気に入りの付箋に文字を書いた。よくある長方形なのだけど、淡い紫色がめずらしくてかわいいやつだ。