それでも、恋

そんなことを考えているわたしを放っておいて、こっちゃんと一条くんの会話が進んでいく。


「一条くんって、太らないの?」

「うん、基本的に食事するのが好きじゃないからね」

「なんで?」

「汚れるから」


一条くんはミステリアスだけど、こんなかんじで尋ねたら、ふつうに答えてくれる。まあ、答えがまたさらなる謎を呼んでいるけれど。


たぶん、こんなかんじで学校新聞のインタビューにも答えてきたのだろう。

うちの学校新聞では、毎週号に連載企画として一条くんのインタビューが掲載されている。しかもそれがめちゃくちゃ評判らしい。

本人曰く「快く引き受けてはいない、しつこかったら諦めただけ」なインタビューだけど。

たしかに、わたしも毎週号、一条くんのコーナーだけこっそり読んでいる。


「そういえば一条くんって、キュート派らしいね」


ふと、学校新聞に載っていた内容を思い出したわたしは、それを口にした。すると折口くんとこっちゃんも話に乗ってくれる。


「新聞部のやつ?読んだ読んだ」

「あれね、女子更衣室では回し読みされてたよ」


たしかに、回し読みされていた。それで、彼らしい独特な回答に女の子みんなが悶絶していた。わかる。あのちょっと癖のある言葉選びが、この美少年だけの魅力なのだ。


気恥ずかしいのか、インタビューされたご本人は「直接きいてくれたら答えるのに」と目を細めた。あざとい。こんなふうに拗ねてみせて許される男の子は、スバルくんと一条くんだけだ。
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