それでも、恋
「でも、キュート派って答えるの、意外かも」
「そう?まあ、どっちも好きだけどね」
こっちゃんは意外だと言ったけど、わたしはむしろセクシー好きな一条くんを想像できない。どっちも好き、らしいけど。
一条くんってあまりにきれいなせいなのか、男らしい色気とは縁遠い場所にいる。たまにどうしようもなく色っぽいけど、こちらがそう感じちゃうことにもなんだか背徳感がある、みたいな聖域にいらっしゃる人だ。
そうして油断させておきながら、彼はいきなりハートをめがけて矢を放ってくる確信犯。
「ちなみに、宇田さんはキュートだよ」
ああ、もう、やめてほしい。さりげないかんじで、そんな甘い言葉を口にしちゃだめだ。美少年なのだから、自重してほしい。
あなたのささいな一言で、わたしの赤いハートの真ん中がぶすっと射抜かれてしまうのを、もうちょっと理解してほしい。
そうでないと、ただの隣の席にいるだけの関係で、うっかり自惚れてしまうじゃないか。
キュート、だなんて。
———好きな子だったら無条件にキュートに感じちゃうと思うので。
一条くんは、ずるい。