それでも、恋
先週の席替えで、一条くんと隣になった。
一条くんの席は窓側のいちばん後ろ、特等席。
冬の窓ガラスは冷たいけれど、寒がりの彼のすぐそばには教室で唯一のヒーターがあるから一安心だ。
一条くんは一日のうちに何度も何度も、ヒーターの温度を調節をしている。窓に近いので、教室の換気もしてくれる。空調番長である。
そして、勝手に他の人がヒーターに触ると舌打ちを鳴らすので、うちの教室の気温に関する全権利は一条くんが握っている。
ふつうに考えたらなかなか横暴だけど、そこに異議を唱える人はいない。もう、自由にやってくれってかんじ。
そんなわけで一条くんの席は、ヒーターとわたしに挟まれている。彼は隅っこの席なので、隣の席に座る人間はわたしだけだ。
そのことを、多くの女子生徒はうらやましがるし、正直わたしも隣の席になったときは、ラッキー!と心の中でガッツポーズした。
一条くんは、ちょっと、まれに見る美少年である。
透けちゃうくらい肌が白いし、鼻は高いし、二重まぶたはぱっちりしているし、眉毛まで整っている。そんな完璧なパーツが正しい場所にすっきりと配置された、涼しげな印象を与えるお顔立ちだ。
あと、おめめがキラキラしている。薄い色の瞳の中に星が飛んでる。これ、ほんとう。
そんな、男子高校生らしからぬ儚さと透明感を併せ持つ最強美少年なので、仲良くなれたらいいな、とか席替えのときはかわいい期待を抱いていた。