それでも、恋
ていうか、シンプルに顔がかわいいので、かわいいの渋滞が起こっている。そのかわいさに免じて、わたしはスバルくんに刹那の別れを告げた。
セーブは忘れないよ。大丈夫。わたしたちは、またここで会える。
きらきらスバルくんの後でも見劣りしない一条くんは、わたしがイヤホンを外したのでちょっとだけ嬉しそうに笑った。
涼しげな美貌のせいでクールな印象が強いけど、一条くんというひとは、感情を隠さずに出していくタイプだ。機嫌悪いときも、そうだし。
だから、いま、ご機嫌が急上昇したのがよく伝わる。
「あ、宇田さんだ」
「うん、で、なに?」
「とくに用事はない」
「でしょうね、用事があるときに呼んでよ」
ただ無駄に邪魔されただけのわたしは、薄く目を開いて美少年を睨みつけた。そりゃあ怒るよ。スバルくんとの時間は、わたしの唯一の癒しタイムなのに。親友のこっちゃんって、癒しとは程遠いし。
だけど一条くんは、わたしの不機嫌なんて気にならないらしい。いや、気にしろよって思うけど、自分のこと以外に興味がないみたいだ。