それでも、恋

それに、一条くんはミステリアス。

SNSはやってないみたいだし、ほかの男子よりもはるかに落ち着いて見えるし、当たり前に女の子から人気があるのに恋人の存在を匂わせることもない。


まあ、そんなところも魅力なのだけれど。

わたしも、その澄み切ったオーラと綺麗な顔立ちのせいですっかり騙されていた。なんなら、うっすらと憧れたりもしていた。


だけど隣の席になってすぐ、だいぶ印象が変わってしまった。


「宇田さん、何やってるの」


イヤホン越しに聞こえる現実の声がうるさい。聞こえるけど、聴いてないよわたしは。

イヤホンしてる人には話しかけてはいけませんっていう暗黙のルールがあるでしょうよ。


『真菜子(マナコ)、もっと、俺にかまってよ』


液晶画面では、きらめく美形なスバルくんが拗ねたように上目遣いでこちらを睨んでいる。


うあ〜スバル様〜。わたしは推しのいじらしさに拝み倒すことしかできない。
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