それでも、恋

それは、まだクラスも別々だった1年生の終業式。
とんでもなく暑い、夏の日だった。


蒸されたように熱い体育館、過呼吸になりかけたわたしは白黒の視界が揺らぐのをなんとか耐えて、こっそり抜け出した。

体育館を抜け出したって、夏休み直前の学校はどこもかしこも暑い。熱中症になりそうだ。

とりあえず、何か飲みたい。そんな思いで自動販売機の前まで来たけれど、小銭が足りなかった。唯一あるのが五千円札だけど、ここでは使えない。

もう、喉の奥が干からびてきている。水、のみたいなあ。どうしよう。みんな低温サウナ状態の体育館に耐えているので、こんなところを通るひとはいない。

そうして、頭を抱えようとしたときだった。


「なに飲みたいの」


それこそ砂漠のオアシスみたいだった。澄み切った透明な声が、わたしに降り注いだのは。

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