それでも、恋


「わたしのは金髪っていうより白髪だけどね」

「でも、超きれいじゃん?卒業しても、真菜子は染めないの?」


極限まで薄い色素の宇田さんのとくべつな容姿は、誤解を恐れずに言うならば、神々しいほどうつくしい。だけど、なんとなく、みんな、宇田さんの容姿について、直接本人に触れるのを躊躇ってしまう。

貶すことはもちろんしないけど、褒めることさえも、17歳の語彙力と繊細さではなかなか難しい。

やっぱり妖精は、汚れた世界と馴染まない。黒い頭が当たり前に並ぶ学校という社会のなかで、宇田さんだけがいつも眩しい光を放っている。

本人はあっけらかんとして、それをなんとも思っていないようだけど。そんな彼女だからこそ、こっちゃんの、こういうところが好きなんだと思う。

宇田さんの個性を、当然のこととして認めている。そして、平然と失礼なことも、それから、まっすぐに褒める言葉も口にする。


「染めないかなあ、睫毛とか浮いちゃうし」

「たしかに、睫毛も綺麗だからもったいないね」


こっちゃんは頷いて、肯定した。宇田さんは、友だちを選ぶセンスがいい。

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