それでも、恋

でも、その弊害もいろいろある。ひんやりした話し方や容姿に加えて、女の子を寄せつけないせいで、勝手にクールな印象があるらしく。親切とも呼べないような当たり前の行いをしただけで、異常なほどに評価される。

とりあえず、挨拶を返しただけでキャーって叫ばれるのは、恥ずかしいのでやめてほしい。おはようくらい、ふつうに返すってば。

正直、自分が女の子からそんなに好まれる理由が理解できない。学校新聞のインタビューもほんとに需要が分からないし、けっこう恥ずかしかった。

でも、どうやら読まれているらしい。そのことで、学校中から話しかけられるようになった。


女子更衣室で俺のしょうもないインタビュー記事が読まれているように、男子更衣室ではなかなか下世話な、しょうもない会話が飛び交っていたのを思い出す。


たいてい男は、まっさらで、何も知らないような女の子に理想を抱いている。宇田さんという稀有な存在は、その手の性癖の男にはぐさぐさ刺さるらしい。

易々と話しかけることもできないくせに、その初雪のような白を、自分の手で汚してみたいと欲している男がどれほど多いことだろう。


何がしんどいって、潔癖の気質がある俺もそのひとりなのだ。真っ白な宇田さんのことを自分の色に染めてしまいたい、だなんて。

そんなのとっくに思ってる。
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