それでも、恋
だけど、ここらへんで相手にしてあげないと、後々面倒なことになるのも経験済みだ。
このかまってちゃんめ。
そんな優しいわたしのおかげで、一条くんはご機嫌になってきた。常時ローテンションな彼だけど、じつはけっこう気分屋さんみたいだ。
「一条くんって惜しいよねえ」
「何が」
「満点の見た目と赤点の性格」
「性格のほうが自信あったんだけどな」
そういうところだよ、と思ったけど、面倒なので口には出さずにため息をつく。
一条くんはへんなひと。絶世の美少年で、本人もその自覚はあるはずだ。でも、だからってそれを誇示してるわけでもない。なんていうか、いつも、普通にしてる。
席替えをきっかけに会話らしきものをする仲にはなったものの、いまだに彼のことを掴めていない。
それに、たぶん彼のほうもわたしなんかに掴まれたくないと思う。
ぜったい、そう。そうとしか思えない行動ばっかりしている。
呆れと諦めの両方の気持ちで、わたしは視線の交わらない美少年をぼんやりと眺めた。