それでも、恋
数学なんかよりも乙女ゲームで遊ぶほうがずっと楽しいけど、スバルくんと写真は撮れない。

日光の下でデートができなくたって、今ここで、丸いテーブルを囲んでいるのはなかなか楽しい。

夕暮れのオレンジが照らす世界。当たり前だけど、わたしはここで生きている。

高梨先生とツーショットも撮ってもらった。一条くんに「うれしい?」と聞かれたから、「家宝にするくらいうれしい」と答えた。

ふうん、と興味なさそうに返事をする彼を「いっしょに撮ろ」と誘ったら、「ばか」と何故か罵られた。


でも、どうせ、撮ってくれる。こっちゃんのスマホが、わたしたちを撮影する。かしゃかしゃり。連写だ。

写真を確認してみると、わたしの隣で薄く微笑んだ美少年は、はちみつみたいに甘い瞳をしていた。ハートがキュンと音を鳴らすのは、もう、彼の前では仕方ないことだと思う。

これが計算でできるなら、一条くんはちょっと恐ろしいし、逆に無意識でやってるのだとしたらめちゃくちゃ恐ろしい。

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