それでも、恋
このあと一条くんとふたりで帰る、ということを妙に意識してしまって、こころが落ち着かないのは気のせいだと思いたい。
「現実のかれし、つくる予定は?」
「できる予定がない」
だから、ちょっと浮かれていて。
折口くんとのゆるい会話は、ちょっと上の空で。
よく整備されたれんがの歩道を、ピンクの部分だけ選んで歩く。緑と白は踏んじゃだめ、というマイルール。
折口くんは「じゃあさ、」と話を切り出す。
それがあまりにもいつも通りすぎるものだから、油断していたのは、否めない。けど。
「俺が、立候補してもいい?」
息が、止まった。あまりの変化球に、ふわふわしていた意識がぎゅんと震える。
「え?」
「宇田さんの彼氏、空いてるんでしょ?」
思わず、みどりを踏んでしまった。ゲームオーバー。