それでも、恋

それから、数時間。俺はずっと宇田さんの顔を飽きずに見つめていた。


すると、ゆっくり、しずかに。長く白い睫毛が揺れて、奥にある灰色の瞳がこの部屋の白を映した。


「うだ、さん」


やっぱり、生きていた。目を覚ましてくれた。そのことにものすごく安心して、たっぷり深いため息が漏れた。

点滴に繋がれた美少女は、学校での彼女とはなんだか別の人みたいだけど、やっぱり宇田さん。名前を呼ばれたので、それに応えるように瞬きをしてみせた。


「看護師さん、呼ぶね?」


宇田さんのお母さんに頼まれていた通り、彼女が目を覚ましたのでナースコールをしようとする。しようとして、ボタンに手を伸ばしたけれど。

その手に、真っ白な手が重ねられて、まるで魔法をかけられたみたいに動かなくなった。

俺だってわりと肌は白いほうだけど、宇田さんのそれの下にあると、健康的な赤みがあって。そのコントラストが、俺の下心を刺激する。宇田さんは、男のロマンを無意識に突いてくるところがある。そそられるのは、俺だけじゃないはずだ。俺だけならいいのに、と思うけど。
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