それでも、恋
それから看護師さんはわざとらしく気を遣ったかんじで病室を出て行った。若いおふたりで楽しんで〜ハートマーク、というだるい絡み。そして、点滴に繋がれた宇田さんと、元気な俺のふたりきりになった。
「わたしの身体、もっと丈夫だったらよかったなあ」
「いっぱい遊びたかった?」
「うん、昼間の公園で遊べていたら、元気なまま帰れた気がするもん」
普段の宇田さんは、自分の身体が弱いことをあまり気にしてないように見える。だけど、17歳の女の子が気にしてないわけがない。触れるのも躊躇われるうつくしい容姿はあまりにも俗世離れしているし、中身がごく普通なのに外見は明らかにとくべつだ。
日光を浴びられない彼女のきもちなんて、ふつうの男子高校生の俺にはわからない。むしろ、年頃の女の子の気持ちがわかって、さらにそれをカバーする言葉をかけられる男のほうが稀だ。
だから、すこし悩んで、言葉を選ぶ。
「じゃあ、夜の公園は宇田さんとだけにする」
「わたしとだけ?」
「ん、もう宇田さん以外とは夜の公園いかない」
折口くんとは、昼間の公園でもいい。ていうか、誰でもそう。宇田さんだけが、月の光しか浴びられない女の子。たまに、うらやましくなるほど、とくべつだ。