それでも、恋
「長いとだめだけどさ、5分とか、ちょっとだけなら宇田さんもブランコ漕げるでしょ」
囁くように話すと、彼女は少しだけ嬉しそうに口もとを緩めた。あまり表情豊かな子ではないけれど、こういう、細かな変化がかわいいなと思う。
「うん、じゃあ、わたしも一条くんとしか公園いかないって約束する」
「嘘っぽいから、やくそくね」
「嘘じゃないから、ほら、やくそく」
色素のない小指と、じぶんの小指をゆるり絡める。俺のほうが指が長いし、手が大きい。そんな些細なことで、どきどきしてしまうのだから、俺はときめきはコストパフォーマンスががよろしい。
「一条くんは、もっとこうだったらな〜とかなさそう」
「ええ、あるよ」
「あるの?たとえば?」
「もっと背高かったらな〜とかね、俺、背低く見えるんだもん」
「そう?そんなことないけどね」
「折口くんのせいだよ、折口くんが大きいから俺の身長があんまり目立たないの」
ほんとうは、もっと、いろいろある。高梨先生みたいに宇田さんを大人の魅力でめろめろにできたらなあ〜って思うし、乙女ゲームのスバルくんみたいに宇田さんにウインクしちゃって甘い言葉とかかけられたらな〜とか思う。
宇田さんがいると、俺はどうにも欲しがりになる。
「宇田さんが退院したら、こないだのデートの続きしよ」
「つづき?あれはまだ完結してないの」
「してないよ、まだやることが残っています」
俺が偉そうに言うのを気にせず、彼女は首を傾げた。髪が揺れて、真っ白なうなじが見える。
大人びた色気というより、少女らしい儚さというのが宇田さんの魅力だけど、俺はそのほっそりした首筋にあっけなく屈した。噛みつきそうになるのを、なんとか堪える。
慌てて咳払いをして、邪念を振り払うけど、あれ、こういうの今日で何回目?