それでも、恋
そして、1週間後。冬なのですっかり陽は暮れているし、気温はそこまで低くない、ある日の放課後。
「一条くんくらい頭よかったら、宿題もすぐ終わるんだろうなあ」
「これまでの宿題をしっかりやってれば、俺くらい頭よくなれるんだよ」
「うわあ、なんかうざい」
「語彙力がないひとの反撃ってかんじ」
わたしと一条くんは、ふたり並んで歩いていた。
きょう踏んでもセーフのれんがは白なのだけど、たまに一条くんが腕を引いたりしてトラップを仕掛けてくるので、何度かゲームオーバーしている。ぜんぶわたしが勝手にやってることだけど。
そんなことより、ぜんぜん手を繋ぎそうな気配がない。あれ、おかしいな、このままだといつも通りの放課後だ。
そんな不安を抱くわたしに、一条くんが腕時計を確認しながら訊ねてきた。
「5分だけ、公園寄ってもいい?」
「いいよ」
ちょっとだけ、矢印の向きが変わる。やっぱり、手、繋ぎそう。