それでも、恋
わたしたちは、街灯が照らす夜の公園に堂々と忍び込んだ。実際はふつうに入口から入っていっただけなのだけど、この表現が正しい気がする。
それから、ブランコに向かうと思いきや、一条くんは立ち止まった。わたしたち以外に誰もいない、とくべつな夜の公園。
「月、見える?」
「あ、うん、みえる」
一条くんが天に向かって指さしたので、その綺麗な指の先を目で追うと、三日月が浮かんでいた。紺色の空に、月と、すこしの星が浮かんでいる。。
「その、すぐ上にあるのが、火星」
「火星?」
「そう、今日は火星と月が接近してるの」
言われてみれば、とくべつ光ってる星がある。火星って、あんなかんじなのか。ふうん、すごい。わたしにはそれ以上の感想が出てこないけど、一条くんは月と火星の共演に目を輝かせている。どうやら、星が好きらしい。