それでも、恋

わたしがムッとして言い返そうとすると。


「っ、」

「ふふ、あったかい?」


ぎゅ、リュックも背負ったまま、ぜんぶを包み込むように柔らかく抱きしめられた。たしかに、思っていたよりも背が高い。背中も広いし、ああ、美少年だけど、ちゃんと男の子だ。

男の子にぎゅってされるのなんて初めてだから、ものすごくどきどきして、言葉が口から出てこない。だって、ああ、もう、ときめきすぎて苦しい。


「俺のこと、好きじゃない?」


冷静な判断のできないわたしを、見えないリボンで操って、しゅるしゅる誘導するみたいに。


「、すき」


気付いたら、告白していた。わたしの小さな声が、夜の冷たい空気に溶ける。

だけど彼には聞こえたようで、「俺もすき」と、またそれを告げてきた。恥ずかしそうなのに、ぜんぜん余裕そう。

わたしは、もう、だめだった。じょうずに話せないし、まともに声が出せない。

もう、どうしよう。わたしたち、恋人になるんでしょ。いま、ラブを伝え合ってる瞬間でしょ。え、すごくない?両思いってこと?でもなんか、想像していたよりけっこう普通かも。いや、でも、一条くんに抱き締められているし!!!!
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