それでも、恋
ああ、なんだか、わからない。だけどわたしのハートなんて、火星と月と、一条くんだけが知っていればいい。そんな気がする。
「じゃあ、いまから宇田さんは、俺のかのじょね」
「うーん」
「で、一条くんは、宇田さんのかれし」
じぶんでじぶんを一条くんと呼ぶので、少しだけ笑ってしまった。あと、一条くんの腕のなかは、想像よりもずっと暖かい。こんな温度、しらなかった。
「実感わかない」
「わけよ」
間髪入れずに返ってくるのは、ちょっと乱暴な言葉遣い。彼らしくないけど、彼らしい。
そろそろ、公園を出て、電車に乗らなきゃ。また入院することになったら困る。ぜったい困る。だって明日から、わたし、一条くんのかのじょだもん。病院にいたらもったいない。
わたしだけが、幸せでこころがぽかぽかしていたら恥ずかしい。だから、一条くんに包まれながら、きいてみた。
「いま、なに考えてる?」
「幸せすぎてふわふわしてる」
「わたしも、おんなじかも」
世界は紺色。夜の中では、わたしの白も気にならない。このまま綺麗な時間に、ふたりで封じ込められてしまいたい。