それでも、恋

〝ご報告は?〟


それだけが送られてきて、なんのことだか一瞬わからなかったけど、一瞬で理解した。おそらく、こっちゃんは、わたしと一条くんがふたりで帰っているのを誰かに聞いたのだろう。


〝一条くんと、おつきあいすることになりました〟

〝まじで、いろいろ聞いてないんだけど〟


その語尾にくっついた顔文字が、よけいにこわい。わたしはすぐに返信した。


〝付き合うことになったの、さっきだもん〟

〝その過程とか!あるでしょ!〟

〝過程?べつにないよ、略奪愛みたいなドラマチックでもないし〟


ふつうの17歳の男女、高校のクラスメイト、そんな仲のふたりに、誰かに語るほどドラマチックなロマンスなんてあるわけない。

ありきたりな恋だ。たぶん、どこにでもあるような初恋のひとつ。

だけど、17歳のわたしには、心臓がくちから飛び出しちゃいそうなほど大きなときめきなのだ。


そんな余韻に浸っていると、またこっちゃんから返信がきた。ちぇ、一条くんじゃないのか。


〝いきなりなの?デートとかは?〟

〝あ、それは、した〟

〝してるんじゃん?!?!なぜ言わない?!?!〟

〝知ってると思ってた、折口くんも知ってたし〟

〝折口くんは一条くんに聞いたんでしょ!したがって、わたしは真菜子から聞くのが正規ルートなの!〟


なるほど、高校生の恋愛というものは、女の子同士の友情とセットにされているらしい。知らなかった。

わたしは浅く反省しながら、もうしばらくこっちゃんとメッセージのやり取りをして、〝あとは、あした話すよ〟と投げやりになって、〝おやすみなさい〟を送信しあった。
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