若女将の見初められ婚

そこからは、トントン拍子に話が進んだ。結婚式は、東山にある大きな神社で挙げて、披露宴は市内の老舗のホテルですることになった。

神社での結婚式は、観光客の人もたくさん見てくれる。

「ええ宣伝や。白無垢で結婚したいと思う人が増えるかもしれん」

真面目な顔で言う旦那様は、どこまでも商売人だった。


披露宴は白無垢と色打掛にする。

「ホンマにええんか?ドレス着たないんか?お色直ししたらええのに」

「いいの。着物で嫁ぎたい」

呉服屋「いわくら」に嫁ぐ私の覚悟を見せたいっていう意味もある。言わへんけど。重いし。

「そうか。好きにしたらいい」
頭を優しくポンポンと撫でてくれた。

披露宴で着る色打ち掛けは、「いわくら」の女将が代々引き継いでいるものだそうだ。

見せてもらったが、あまりの豪華さに触ることも憚られる。当日は粗相をしないことだけに力を入れよう。

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