若女将の見初められ婚
俺の嫁さん
*◇*◇*
目が覚めて、無意識に横を探る。
…いない。
しょうがなく、起きてリビングに行く。
「おはよ。お休みやのに早いねぇ」
ニッコリと微笑む志乃がいた。
「早いのは志乃やろ」
せっかくの休みやし、朝からイチャイチャしようと思ってたのに。
「いいお天気やったから、洗濯たくさんしたくて」
真面目やなぁ。
「朝ごはん、すぐできるよ。もう食べる?」
「あぁ、もらおかな」
パタパタとキッチンに行き、朝食の支度をする志乃の姿をボーッと見つめる。
軽いクセのある長い黒髪は、今日は緩やかに編み込まれている。
仕事の日は着物なので、休みの日はゆったりとした格好を好むらしい。
身には、ふんわりとした細かいストライプのシャツワンピースを着ていた。
クルクルと働く志乃に近づき、後ろから抱き締める。
「うわっ。びっくりした。火つけてるから危ないよ」
咎められるように言われて、軽くムッとする。
志乃の頭の上に顎を乗せて、グリグリ擦る。
「志乃不足」
最近、若手女優の写真集の仕事が入り、東京への出張が増えた。
今日は久しぶりに二人でゆっくりできる日だ。気の済むまで、志乃を堪能させてもらうことに決めた。
鍋の火を止め、志乃はクルッとこちらを向くと、ギュッと抱きついてきた。
「こんな感じで足りる?」
恥ずかしそうに顔を上げる。
くーっ、堪らんなぁ。
思わず、可愛いことを言う口を塞いでしまった。
ひとしきり堪能して顔を離すと、真っ赤な茹でダコのような志乃が出来上がっている。
「これでちょっとだけ足りた」
またギューっと抱き締める。
結婚して半年も経つのに、夫婦の触れあいになかなか慣れず、いつも恥ずかしそうにする志乃が堪らなく可愛い。
「もぅ。ご飯の支度進まへん」
拗ねた口ぶりもまたいい。
このままでは終わりがないので、仕方なく志乃を解放し、着替えに行く。