若女将の見初められ婚
しの君、帰ってくるんかな。
急に不安になる。
久しぶりに会えるのを楽しみにしてたのに…
大学の時のお友だち?
いや、元カノやな、あれは。
だって『理沙』って呼び捨てやもん。
今も付き合いがあるような感じやったけど。
「まつの」に連れて行ったということは、しの君の「大事なお客様」ということ?
頭をふるふると振って、気を取り直す。もう考えるのは止めとこう。
とりあえず、お煮しめ炊かないと。女将さんにもお分けせなあかんし。
意地で晩ごはんの支度をし、女将さんにお裾分けをする。でも女将さんたちが帰った後も、しの君は帰ってこない。
ハッと気がつきスマホを確認すると、「晩飯いらん」とメッセージが入っていた。
怒りのボルテージが再び上がる。
「まつの」行ったんちゃうの?
「まつの」はいつの間に、ご飯出してくれるようになったの!
フーッと感情を逃すように吐息をつく。
もういい。ご飯を食べずに待ってたけど、さっさと食べよう。
お煮しめ、せっかく美味しく炊けたのに…
悲しい気持ちでご飯を食べ、お風呂を沸かすことなく、シャワーで済ます。
本当なら、出張帰りのしの君のために、ちゃんとお風呂を入れるべきなんだろうけど…
意地悪をしているような気がして、更に気が滅入る。
こういうとこが子どもなんかな…
普段は気にならない歳の差が妙に気になる。
私がもっと大人だったら、女の人と食事に行く旦那さんのことも心広く受け入れられるのだろうか。