若女将の見初められ婚
誤解したやろなぁ。
頭をガリガリと掻いた。
シャワーを手早く浴びて、和室の襖をそっと開ける。
志乃の布団は小さく盛り上がっていた。
俺の布団も敷いてくれてるけど…
いつもはぴったりと隙間なく敷き詰めるのに、志乃の布団とは間がある。これは怒ってますよと言うことか。
ズリズリと布団をくっつける。
志乃を覗き込もうとするけれど、俺の布団に背中を向けるように寝ていて、顔を窺うことができない。
これはホンマに怒ってるな。
思わず苦笑いになる。
でも、怒ってますということを一生懸命アピールしている志乃がやけに可愛い。
布団の隙間が微妙に近いのにも笑いが込み上げる。離しすぎるのは気が引けるといったとこか。
そういう人の良さが志乃のいい所だ。でも、そんなことを指摘したら、本格的に拗ねるだろうから言わないが。
明日は休みなので、一日かけてご機嫌を取ろう。それはそれで楽しみでもある。
布団に横になり、志乃の背中を見つめる。こっちを向けと念を送るが、向きそうにない。
志乃め、なかなか強情やな。
さあ、明日はどうやって仕掛けるか。
志乃を怒らせた自分の非は棚に上げて、ワクワクしながら目を閉じた。