若女将の見初められ婚
理沙さんの支度が整って、撮影が始まったようだ。見たくなくても目に入ってくる。
ものすごく綺麗…
今はもうモデルの仕事はしていないのだろうけど、立ち居振る舞いは完璧にプロだ。
私はボーっと見ていたが、ふと、しの君の方を見る。
撮影を見つめる無表情の顔からは、何の感情も読み取れない。
こんなに綺麗な元カノさんを見て、何も思わへんことなんてある?
私が男やったら、絶対私より理沙さんの方がいいわ。
思わず下を向いてしまう。
今日は走り回って働く予定だったので、ボーダーの長袖Tシャツと下はストレッチの効いたデニム、そこにエプロンをつけている。
髪は邪魔にならないように頭の高い位置でお団子にし、愛用の深紅の玉かんざしを刺していることだけが唯一のオシャレだ。
走り回っていたので、化粧はとっくに崩れてしまっているし。
この差は何?
途端に惨めな気持ちになっていく。
あかん。仕事中に、こんなこと考えたらあかん。
勝手に比べて、勝手に落ち込む。
面倒くさい女やわ、私。
フーッとため息をついた。