若女将の見初められ婚
嫁さんの危機
*◇*◇*
「ただいま」
母屋の扉を開けて声をかける。
人の気配が全くない。
リビングが真っ暗だったので電気をつけた。寝室にしている和室がガランとしているのが見える。
風呂場を見てもいない。
「志乃?」
二階に呼びかけてみても返事はない。
キッチンに帰ってきて、テーブルにメモが置いてあるのに気づいた。
「女将さんたちと食事に行きます」
志乃に電話をしてみる。
呼び出し音が鳴ったが、しばらくして留守番電話に切り替わった。
ため息をつき、母の携帯に電話をする。
やはり出ない。
チッと舌打ちをして、もう一度志乃に電話をする。
「どこにおる?迎えに行くから連絡して」
留守番電話にメッセージを残す。
メッセージアプリにも同じ内容を入れた。