若女将の見初められ婚
開店前に朝礼がある。
たくさんの人の前で挨拶をするのは倉木さんだ。改めて偉い人なのだと実感する。
「今回のイベントで、京都の魅力をアピールしていきたい。京都にはこんなに素晴らしいものがあるということを伝えていきましょう!」
会場全体の温度が上がった。さすが、有名百貨店の副社長。みんなを鼓舞するのがうまい。
倉木さんは話し終わると、私の方をチラッと見て軽く目配せをしてくれた。
お酒を飲んで陽気な倉木さんもいいけれど、副社長の倉木さんはとても素敵だった。
改めて頑張ろうと気を引き締める。
イベントは初日から賑わった。
最初は慣れずにオロオロしたが、午後には落ち着いて接客することができた。なんせ、坂井さんが接客のプロなので、坂井さんの様子を見ているだけですごく勉強になる。
昼には、しの君が来てくれてお昼ご飯を差し入れてくれた。
なんと、しの君お手製のお弁当!
独身期間が長かったので、しの君は意外と料理が上手い。
大きなおにぎりが最高に美味しかった。
「志乃さんのご主人、むちゃくちゃステキですね!」
坂井さんが目を丸くして驚いてくれる。
「ハイ、ソウナンデス」
照れるが、しの君が素敵なのは本当のことだ。嘘はつけない。
「ごちそうさまですぅ。」
坂井さんに散々冷やかされた。