若女将の見初められ婚
二日目、三日目と過ぎていくうちに、どんどん慣れて楽しむ余裕が生まれる。
普段「いわくら」ではお客様の年齢が高めなので、若い女性客と接するのも新鮮だ。
吉木姉さんもちょくちょく見に来てくれ、メガネをクイッと上げながら「順調ですね」と言ってくれることが励みになった。
途中、頼朝先生たちも陣中見舞いに来てくれた。
織田先生は、店先で即興の「帯の結び方教室」を開いてくれて、売上に大いに貢献してくれた。
ちゃっかり、ご自分の着付け教室を宣伝していたが、吉木姉さんにバレなければ大丈夫だろう。
藤枝先生は若い人を見ると縁組み魂に火が着くのか、坂井さんや、あろうことか吉木姉さんにまで「もう誰か決まった人おる?」と聞くので慌てて止めた。
藤枝先生は本当に恐いものなしだ。
冷やかな吉木姉さんに、そんなことを聞けるのは間違いなく藤枝先生しかいない。
どんな返事が返ってくるのか、ちょっと気になったけど…
女将さんは何度か来てくれたが、他の店舗が気になるようで、あちこちのお店を見て回る。
化粧品や涼しげなサマーワンピースなど、興味津々のようだ。
女将さんはとても綺麗な人なので、確かにワンピースも似合いそう。
一着プレゼントしようかな…
一通り見終わり、戻ってきた女将さんがススッと寄ってきて、「なぁ、志乃ちゃん。アレ、うちには派手やと思う?」と恥ずかしそうに指を指す。
グッドタイミング!女将さんの好みをリサーチできる。
どれどれと指の指す方を見ると、ビキニの水着だったので驚愕した。
どの場面でこれを着る?
いつでも攻めの姿勢、さすが女将さんだ。
アレをプレゼントしても大丈夫かな。
思案するが、しの君に相談したら、間違いなく却下されるだろう。