若女将の見初められ婚

四日目の午後、

「志乃ちゃん」
と声をかけられて振り向くと、大学で働いていたときの同僚だったゆかりさんだ。

「約束どおり、浴衣買いに来たよ」懐かしい笑顔に思わず飛び付いてしまった。

「すっかり若女将が板についたねぇ。浴衣もよう似合ってるよ」

話したいことは山ほどあったが、ここでおしゃべりをするわけにはいかない。

ゆかりさんの好みを聞きながら、浴衣を勧めていく。

白地に紺の朝顔柄のものを気に入っていただき、「たちばな」の髪飾りも合わせて購入していただけた。

落ち着いたらランチに行こうと約束し、手を降って別れた。

わかった!
私はお姉さんタイプの人が好きなんやわ。ゆかりさんといい、吉木姉さんといい、多分、自分にはない包容力を求めてるんやなぁ。

そうかそうかと頷いていると、

「志乃さん」

また声をかけられる。

今日は、知り合いが多く来てくれる日?

「はい!」

機嫌よく振り返ると、そこには理沙さんがいた。

< 96 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop