LOVEPAIN⑥
「――あれ?」
私は手に持っていたはずのチケットがなくて、
慌てて辺りを見渡す
チケット、何処で落としたのだろう?
「――チケット、無くなった」
これで、涼雅のライブを見に行かなくていいのだと思うと、
安心した
がっかりもするけど、
安心する気持ちの方が強い
ステージに立つ涼雅は、
きっと、目を逸らしたくなるくらいに眩しいはず
見なくても、
涼雅のそんな姿は想像出来てしまう
そして、現実の涼雅は、
私のその想像よりも、
きっと、遥かに素敵なのだと思う
「――涼雅、ごめんね。
昨日、急な仕事が入って」
翌日、飲んで朝帰りして来た涼雅に、
私はそう嘘を付いた
「あ、そうなんだ。
べつに、捌けず余ってたチケットだから、
気にすんなよ」
「あ、うん……」
あのライブハウス前で、
涼雅の人気を知った今
チケットが捌けず、
余っていたなんて嘘なのだと思った