LOVEPAIN⑥



「身分証の方よろしいでしょうか?
先月から、身分証の提示をお願いしていまして」


私と篤がその響屋に入ると、すぐに店員にそう言われた。



「あ、んなのねぇよ」


篤は運転免許証を持っているから、
それは嘘だろう。



「お連れ様の方は?」


「えっと…」

「うっせぇ、もういい!」


篤は私の腕を掴み、扉を開け店から出た。


「忘年会の時は何も言われなかったですのにね」


私は数日前の事を思い出した。


あの時は、成瀬だけではなく大人が沢山居たから、特に言われなかったのだろう。


店側が未成年の私達に気付いていなかったのか、
多少、目を瞑ってくれていたのか。


「あー、むしゃくしゃする。
よけい酒が飲みたくなったじゃねぇかよ」

篤は掴んでいた私の腕を離した。


もっと掴まれていたかったな、と思ってしまった。


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