LOVEPAIN⑥
◇
「身分証の方よろしいでしょうか?
先月から、身分証の提示をお願いしていまして」
私と篤がその響屋に入ると、すぐに店員にそう言われた。
「あ、んなのねぇよ」
篤は運転免許証を持っているから、
それは嘘だろう。
「お連れ様の方は?」
「えっと…」
「うっせぇ、もういい!」
篤は私の腕を掴み、扉を開け店から出た。
「忘年会の時は何も言われなかったですのにね」
私は数日前の事を思い出した。
あの時は、成瀬だけではなく大人が沢山居たから、特に言われなかったのだろう。
店側が未成年の私達に気付いていなかったのか、
多少、目を瞑ってくれていたのか。
「あー、むしゃくしゃする。
よけい酒が飲みたくなったじゃねぇかよ」
篤は掴んでいた私の腕を離した。
もっと掴まれていたかったな、と思ってしまった。