LOVEPAIN⑥
「雲雀、知り合い?」
佐藤雲雀は一人でバイクに乗っていたわけではなくて、
後ろに女の子を乗せている。
その子もヘルメットを取り、その顔を見て、あれ?高橋みかちゃんじゃないの?と思った。
いつか見た、モデル佐藤雲雀と人気アイドル高橋みかの熱愛報道。
「お前、バイクから降りろ」
「えっ」
佐藤雲雀はその女の子の腕を掴み、
力任せにバイクから突き飛ばしていた。
その女の子は、地面へと落ち、
かろうじて手をついて大怪我になるのを避けたように見えた。
カラカラ、とその女の子が持っていたヘルメットが私の方へと転がって来る。
「ちょっと、何すんのよ!」
立ち上がったその女の子の右膝が、
血で滲んでいるのが分かった。
「うっせ。
俺に気がありそうだからちょっと誘ったらホイホイ来やがって、消えろよお前」
「消えろって…。
最近ちょっと売れてるからって調子乗ってるけど、
あんたみたいなヤバイ奴、そのうちこの業界から消えるよ、絶対」
女の子がそう言い終わるのと同時に、
佐藤雲雀がその女の子に手を伸ばして、その髪を掴む。
「いたいっ」
「ちょっと、辞めて!」
思わず、私はそんな二人に近付き、
その佐藤雲雀の手を掴んだ。
それで興が削がれたのか、
佐藤雲雀はその子の髪から手を離して、私の手を振り払った。
その女の子は泣きながら、私達から離れて行く。
「おい、AV女優」
その佐藤雲雀の声に、私はその女の子から佐藤雲雀に目を向けた。
本当に、佐藤雲雀はヤバイ。
私でさえ、今まで男性に先程の女の子程ひどい目に遭わされた事はない。
なんなの、この人…。