LOVEPAIN⑥
初日の出
佐藤雲雀がバイクで走り去り、気付く。


私はこんな山の中に、置き去りにされたのだと。


佐藤雲雀が居なくなった今、
本当にシーンと静まり返っている。


車も相変わらず通る事もない。


どうしよう…。



どうやって帰ればいいの?


この山道の道路を下って行けばいい事は分かるけど、
果たして下山するまでに何時間掛かるのだろうか?


けっこうバイクでも、走っていたし。


とりあえず、朝になって明るくなるまで動かずに待とうか?


こんな暗闇の中歩くのは、無謀だ。


幸い、今ある広場みたいな所に、
トイレのような建物がある。


あ、と私はショルダーバッグから、携帯電話を取り出した。



あのバイクから放り投げられた衝撃で壊れていたら、と思ったけど、
それは大丈夫みたい。


良かったぁ。


とっさに、成瀬に助けの電話を掛けようと思ったけど、思い留まる。


佐藤雲雀に誘拐されたとかならともかく、
私は自分の意思で佐藤雲雀に付いて行って、こんな目に遭っている。


それに、芽衣子さんという婚約者のいる成瀬に、
甘える訳には…。


ナツキ…。


ナツキはもっと無理だろうな。


大晦日で店の事で忙しいだけではなく、
今の微妙な私達の関係。


そして、何故こんな場所に居るのかを説明出来ない!言えない!


もしかしたら、これは佐藤雲雀から与えられた試練なのかもしれない。


私が男に頼らず、この状況を打破出来るかどうか。


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