LOVEPAIN⑥
「けど、間に合います?
その芽衣子さんのご両親との食事会何時からなんですか?」


今日はシンプルな撮影だけど、
それなりに時間は掛かるはず。


撮影のスタートも、今日は昼過ぎでゆっくりだし。



「20時からだから、19時に出たら間に合う。
もし最悪、俺先に抜けるかもしれないけど」


「全然構いませんよ」


まるっきりの新人の頃とは違い、
今は現場に一人でも大丈夫だと思う。


相変わらず、仕事場の人達には私は嫌われているけど、
特にそれも慣れて気にならないし。


「その時は帰りタクシーで頼む。
会社宛に領収書貰っといて」


「はーい」


私がそう返事すると同時に、成瀬が私の頬に触れた。


突然でその意味不明な行動に、驚いてしまった。


「糸屑…いや、動物の毛か?」


成瀬は自分のその指先で摘まんだ物を見ている。


「あ、花子の。
篤さんの所の猫なんです。
今日もさっきまで会ってて。
ほら、篤さんが仕事で居ない時とか私が面倒見てて」


最近は、篤が留守の時以外も花子に会っている。


あの初日の出以来、私と篤はわりと上手く行っている。


上手く行っているというのは、
喧嘩というか私が篤を怒らせてしまう事が少ない気がする。


元旦の夜は会えなかったけど、
二日の夜は篤に会えた。


そこから、ほぼ毎日篤と会っている。


昨日は撮影で遅くなって会えなかったし、今日も遅くなりそうだから会えないだろうけど。


まあ、AVの撮影の後、篤だけじゃなく花子にも会おうと思えないからいいのだけど。


篤とは、一緒に篤の部屋で私が事前に作っていた夕飯を食べたり、
テレビを見たりの毎日を過ごしている。


勿論、私達の話題の中心は花子なので、
花子の事で話題が尽きない感じで。


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