LOVEPAIN⑥
今日も撮影は順調に進んでいた。


監督はWDS移籍後の一本目を撮って貰った事がある監督で、
この人は特に指示も少ないから、やりやすい。


今日の撮影は特に設定を設けず、相手役の男優の山本ヤマトと大きなベッドの上でお喋りをしながら、
絡むだけ。



「広子ちゃん、綺麗な肌だよね」


山本ヤマトは、下着姿の私のウエスト辺りを、
舐めるようにキスをしている。


そういえば、佐藤雲雀のバイクから派手に転がり、私の体は痣だらけになっていたけど、
今はすっかりと元に戻った。


撮影に間に合って良かったと思う。


もしあんな体で撮影に望んでいたら、
当日急遽中止になってうちの事務所の責任で色々損害賠償とかの騒ぎになっていたかもしれない。


そう思うと、佐藤雲雀は大丈夫なのだろうか?


私みたいに脱ぐ事はそうそうないかもしれないけど、
彼はモデルだから。


仕事に影響出ていなければいいけど。



「広子ちゃん、もしかして今好きな男の事考えてなかった?」


私のブラジャーを外し、私の胸に顔を埋めていた山本ヤマトは、
上目遣いで私を見る。


「いえ。考えていたのは、わりとどうでもいい男の事です」


私にとって佐藤雲雀は、わりとどうでもいい。


以前みたいに、彼に対しての嫌いだとか怖いとかの感情は、
消えたけど。


「そう…」


山本ヤマトはそう言って、笑っている。


なんとなく、この男優さんとは相性がいいかもしれない。

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