LOVEPAIN⑥
「勝手に見て悪いけど、お前の鞄から見付けた」


成瀬は私に、その袋を見せる。


その白い紙袋は、近所の調剤薬局の名前が書かれていて、
その中には新しい精神病院で貰った処方箋で出された薬が入っている。



「俺は薬に詳しくないから、
ネットで調べた」


睡眠薬はともかく、SSRIは調べられたら私の病気が知られるだろう。


「いつから?」


そう訊かれ、誤魔化す事も一瞬考えたけど、
観念したように口を開いた。


「ーー初めて病院に行ったのは、最近だけど、症状はもっと前から有りました」


「なんでお前言わないんだ?」


そう言って、成瀬は首を横に振った。


その理由に思い当たったのだろう。


私はAV女優としてでも、成瀬の側に居たかった。


もし、病気が成瀬に知られたら、
もう側に居られないんじゃないかって。


「悪かった…」


成瀬はうつむきその顔は見えないけど、
その声がとても苦しそうで、私は何も言えなかった。


「成瀬さん。
一人にして貰っていいですか?」


芽衣子さんとの事もそうだけど、
今、辛そうなこの人とこれ以上一緒の空間に居るのが辛い。



「ああ。
今夜一晩入院になるみたいだから、
明日の朝迎えに来る。
お前の着替えも一緒に持って来て、
そこのロッカーに突っ込んでおいたから」


成瀬はそう言って、そのまま病室から出て行った。


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