LOVEPAIN⑥
暫くすると、コーヒー2つとオレンジジュースが運ばれて来た。


私も成瀬も芽衣子さんが話し出す事を待っていて、
ずっと口を閉ざしている。



芽衣子さんは、コーヒーにミルクと砂糖をたっぷりと入れて、
そのコーヒーを一口飲んだ。


「遥さんも広子ちゃんも飲まないの?
そんなに固くならないでね。
別に私は怒ってるわけじゃないから」


芽衣子さんはクスクスと笑っている。


なんだか、成瀬と私は浮気でもバレ
たかのように、暗い。


実際、今の私達は何もないし、
夕べの事だって、成瀬も私も何も芽衣子さんにやましい事なんて何一つない。


そう思い、私はオレンジジュースのストローに口を付けた。


「私から話さないと二人共黙ったまんまだよね。
遥さん、これ返します」


芽衣子さんは鞄の中から、
小さなケースを取り出した。


それは、リングケース。


芽衣子さんがそれを開くと、
タテツメのダイヤのリングが現れた。


それはきっと、クリスマスイブ、成瀬が芽衣子さんへとプロポーズと共に送った、婚約指輪なのだろう。


「後、これも」


芽衣子さんは、左の薬指にしていた小さなピンクサファイアが付いたリングを、
テーブルに置いた。


そして、思い出したように、
キーケースから一本の鍵を取り外していた。


それは、成瀬の部屋の合鍵だろう。

< 427 / 501 >

この作品をシェア

pagetop