LOVEPAIN⑥
「遥さん、別れて下さい」


「ちょっと芽衣子さん待って下さい!
夕べの事は私のせいなんです!
私があんな派手に倒れたから、成瀬さんはそんな私を放っておけなかっただけなんですよ!」


「うん。遥さんから聞いた」


「なら、なんで?
芽衣子さん、そんな事くらいで嫉妬して別れるなんて言う人じゃないじゃないですか?
そりゃあ、芽衣子さんのご両親には、夕べ来なかった成瀬さんの印象は悪くなったかもしれませんけど」



まさか、ご両親に反対されたから、
別れたいと言い出したわけではないと思うけども。


「広子、お前は黙ってろ。
芽衣子、お前ばかりに言わせて悪いな。
お前が思っているように、俺はまだ広子の事が好きなんだ」


成瀬がそう口にすると、芽衣子さんの表情は一瞬陰ったけど、
次の瞬間には、明るく笑っていた。


「やっと、認めた」


何処か嬉しそうに、笑う芽衣子さん。


私は黙っていろと言われたから、もう口は出せないけど。


成瀬が今も私を思っていてくれた事に、
嬉しいとかよりも戸惑い驚いてしまう。


そんなもの、とっくに消えて無くなったと思っていたから。



「遥さんが私と結婚を決めたのは、
贖罪なんだろうな、って」


芽衣子さんは、自分の右の手のひらを見ている。


それは、いつか私が彼女に付けた傷。


言われなければ分からない程度には消えたけど、
あの時の傷は芽衣子さんの手のひらにあり、
それはこの先も消えないだろう。

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