LOVEPAIN⑥
「芽衣子、本当に悪い。
婚約破棄の慰謝料とか、お前の望むように償う」


「そんな、お金なんていらないよ」


芽衣子さんは困ったように、首を振っている。


「でも、そう言うわけには…」


「私も遥さんとは結婚出来なかったの。
ごめんなさい」


成瀬の言葉を遮り、芽衣子さんは頭を下げた。


芽衣子さんは顔を上げて、話し出す。


「私…自分の親に遥さんの仕事の事ちゃんと言えなかった。
芸能関係の事務所の社長だって言っていて、
一切AVの事とか言わなかった。
きっと、この先もそうだったと思うし、
もし、うちの親、遥さんの仕事の事を知ったら、結婚に反対したと思うの。
うちの父親、けっこう固い人間だから。
だから…。
私は、親の反対を押しきって迄、遥さんと結婚はしなかったと思う」

芽衣子さんはその目に涙を溜めている。


「夕べ、遥さんが来なくて、凄くホッとしたの私…。
だから、ごめんなさい…。
プロポーズしてくれた時に、ちゃんと断れば良かったのに。
遥さんのプロポーズが嬉しくて、ついつい」


その時の事を思い出したのか、
芽衣子さんは幸せそうに微笑んだ。


「広子ちゃん」


そう突然名前を呼ばれ、私と芽衣子さんは目が合った。


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