LOVEPAIN⑥
「だから、お前チャンスじゃねぇか」


篤のその言葉に、おでんの玉子を箸で割っていた手が止まる。


「成瀬さんが傷心の今、狙わないでどうすんだよ」


以前なら、篤は私と成瀬の関係を知らないから、
そうやって簡単に言ってくれるよな、とか思ったかもしれないけど。


今は、その篤の言葉が私の胸をナイフのようにえぐる。


篤は、私をどう思っているのだろうか?


あの元旦の時と、
一度、この部屋で私の手を握ってくれたけど。


もしかしたら、と思ったのは、
私の勘違いだったのだろうな。


「つーかよ、最近こいつ変なんだよ」


篤は箸を皿に置き、
花子を抱き上げている。


「変って?」


花子がどうしたのだろう?と、不安になる。


「股の辺りに、デキモノみてぇのがあって。
日に日にデカクなってねぇか、これ」


篤は気付いていないけど。


私は少し前から、気付いていた。


花子が実はオスなのだという事を。


最初それが分からなかったのは、
まだ花子があまりにも子猫過ぎたのだろう。


「篤さん、花子は実は太郎なのかもしれませんよ?」


ハッキリとオスなのだと口にしていいものなのか、
ぼんやりとそう伝えた。


「あ?
意味分かんねぇ。
病気じゃなきゃあいいんだけどよ。
ガンとか猫でもあんだろ、きっと」


真剣に花子の事をそう心配している篤を見て、
本当の事が言いづらくなって来た。


< 450 / 501 >

この作品をシェア

pagetop