LOVEPAIN⑥
「もし、本当に広子があれで妊娠してたら、
どーせ成瀬さんにでも相談して、なんとかするでしょ?
当たってない?」


ナツキの言うそのなんとかは、堕胎するって意味だろうな。


どことなく、その言葉は私を馬鹿にしているように聞こえた。


「そうだろうね。
ナツキの子供なんて、死んでも産みたくない」


挑発だって分かっているけど、
それを買うように言葉を返してしまう。


ナツキは私を見るその目を、グッと細めた。


「そういえば、今日のバレンタインデーは、まだしつこく成瀬さんの事追っかけ回すの?」


ナツキの口からそうやって成瀬の名前が出て、
そうじゃない、と首を横に振った。


「私、篤さんが好きなの。
成瀬さんよりも。
ナツキはまだ私が成瀬さんの事だけを好きなのだと思ってたと思うけど」


私のその言葉に、ナツキは少しも驚く事もなく。


「知ってた」

そう言った。


何故、私が篤の事を好きなのをナツキは知っているのだろう?と、
焦りのような気持ちが湧いて来る。


「お前の誕生日の時。
お前の部屋で、涼雅君と篤君とで飲んだ時。
あの時、広子の篤君を見る目見てたら、きっとそうなんだろうな、って」


誕生日の時って…。


あの時から、私はもう篤に惹かれていたんだ。


「自分でも、そんなに前から篤君の事好きだった事に、気付いて無かった?」


ナツキは、クスクスと笑っている。


今日初めて、その表情はいつものナツキだと感じた。

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