LOVEPAIN⑥
「あ、思い出した。
ちょっと待ってて」


ナツキはソファから立ち上がり、
寝室の方へと入って行った。


そして、暫くして、リビングに戻って来ると、
その手には、あの時ナツキにゴミ箱へと捨てられた、
篤に貰ったあのネックレスがある。


「頃合い見て、成瀬さんにでも頼んで広子に返して貰おうって思ってたんだけど」


ナツキはそう言って、私に近付くと、
私の首にあるネックレスを両手で掴んだ。


そのネックレスは、クリスマスプレゼントだとナツキがくれた、
蝶のネックレス。


ナツキがその手に力を入れると、
その蝶のネックレスは、簡単に千切れ、

床に小さな音をたてて落ちた。



「ナツキ…」


驚いてナツキを見るが、
ナツキは私ではなくその床に落ちたネックレスを見ている。


「篤君のやつと違って、簡単に切れた」


ナツキは何もなくなった私のその首に、
篤がくれたハートとクローバーのチャームが付いたネックレスを、
付けてくれた。


私はそのネックレスに、触れた。


「今日のバレンタインデー、篤君にチョコあげるんでしょ?
健闘を祈ってるから。

その報告はいらないけど」


ナツキはそう言って、笑う。


その顔を見ていると、無くしたと思ったナツキに対する情も未練も、
まだ胸の中に沢山ある事に気付く。


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